
バースデー小説
「えっ……嘘!? ほんとに!?」
その求人広告を見た時、わたしは目を疑った。
『仮想世界新機能のテスター求む。未経験者歓迎。フルダイブにうまく適合できない方もご相談ください』
現在は、VRゲームだけでなく様々な分野でフルダイブ技術が利用されるようになった。だが、一定の割合でこのフルダイブにうまく適応できない人がいる。
わたし、夏八木風花もその一人だ。わたしの場合は、酔ってしまうなどの症状はないのだが、《過剰適合》――つまり適合しすぎて、本来自然に見えるよう“ごまかされている”オブジェクトが、生データとして見えてしまう。この体質のせいで、どのゲームに参加しても没入感はゼロ。罠や隠し扉は丸わかりだし、ゲームによっては敵の弱点や隠しステータスまで見えてしまうという始末だ。
いつしか、わたしにVRMMOはプレイできないんだ、と諦めていた。
しかし、なんの気なしに見ていた求人情報サイトで、さっきのバイト募集を発見したのだ。わたしの過剰適合がOKかどうかはわからない。それでも、こんなチャンスは今までなかった。諦めていたVRへの興味が、ムクムクと湧いてくるのを感じる。
「そうだ、アミュスフィアどこにしまったっけ」
起動したのは最初の二、三回だけで、それからはしまいっぱなしだ。
でも、VRMMOに未練があって――値段的なこともあるが――どうしても捨てることができなかった。それを、また活かせる日が来るなんて。
そして、アルバイト面接の当日。ガチガチに緊張して面接に臨んだ。だが、自己紹介で《過剰適合》の話をしたとたん、「実際に見せてもらえますか」とアミュスフィアを被らされ、あれよあれよという間に合格してしまった。実装させた状態で生データを確認できる、優秀なテスターになれるとのことだ。あれほどイヤだった《過剰適合》のおかげで認められるなんて、なんだか複雑だ。
でも、これでついに憧れだったVRMMOの世界に入ることができる。しかも、そのゲームをより楽しくするための手伝いができるなんて、こんなに嬉しいことはない。
なんだか、今まで曇っていた世界が、急にクリアに見えるような、そんな感じがした。
わたしがテスターとして参加するのは《ガラクシア》。《ALO》や《GGO》など、世界観の違うゲームのキャラクターをそのままコンバートして遊べるという機能が体験できる。
だが、《ガラクシア》のウリはそれだけではない。プレイヤーが体験した思い出を、追体験できるというシステムが搭載されている。まるで夢のような話だが、脳と直接信号をやり取りするアミュスフィアだからこそできることなのだろう。
とにかく、そんな最先端のゲームのテスターとは、とてもやりがいのある仕事だ。テスターの応募者は、かなり多かったと面接官の人に聞いたが、それも頷ける。そんな中から選ばれたと思うと、これまで邪魔だった《過剰適合》にも、ちょっとだけ感謝してもいいような、そんな気がした。
そして、いよいよアルバイトの初日になった。こんなにドキドキしたのは、いつ以来だろう。もらったテスター用のコードを入力し、ゲームにログインする。まずはキャラの登録からだ。
初期キャラクターということで、選べる衣装はそれほど多くない。それでも、色やスタイルは何パターンか用意されている。これから長い付き合いになるかと思うと、やっぱり外見もこだわりたくなってしまう。
「どの衣装にしようかなあ……」
これいいかな、と目を留めるのはたいてい寒色系の衣装。
これは、わたしの名前である「風花」が影響していると思う。「風花」は「かざはな」と読むと、「晴天時にひらひらと風に舞う雪」という意味がある。好きだった曲にちなんで付けてくれた、と両親から聞いたことがあるが、ひんやりとした冷たさと、すぐに消えてしまう儚さを持ったこの名前が、わたしは好きだ。
だから、ということもないけど、リアルでの服装も寒色系が多い。友達がかわいい服を着ていると「いいなあ」と思うんだけど、自分で買うとなると、なかなか選択肢に入らない。
それなら、せめてゲームの中くらいかわいい衣装で、と思っていたんだけど、やっぱりピンとこない。散々迷った挙げ句、やっぱりいつもと同じ、青を基調とした衣装を選んだ。だって、自分の分身だもんね。

キャラクター作成が終わり、ついにゲームスタートだ。もちろんテスターという立場だけど、基本的には普通のプレイヤーと同じだ。これから、どんな冒険が待っているんだろうか。
「これからよろしくね、フウカ」
トン、と自分の胸を手で叩いて、わたし――フウカはフィールドへ一歩踏み出した。
その求人広告を見た時、わたしは目を疑った。
『仮想世界新機能のテスター求む。未経験者歓迎。フルダイブにうまく適合できない方もご相談ください』
現在は、VRゲームだけでなく様々な分野でフルダイブ技術が利用されるようになった。だが、一定の割合でこのフルダイブにうまく適応できない人がいる。
わたし、夏八木風花もその一人だ。わたしの場合は、酔ってしまうなどの症状はないのだが、《過剰適合》――つまり適合しすぎて、本来自然に見えるよう“ごまかされている”オブジェクトが、生データとして見えてしまう。この体質のせいで、どのゲームに参加しても没入感はゼロ。罠や隠し扉は丸わかりだし、ゲームによっては敵の弱点や隠しステータスまで見えてしまうという始末だ。
いつしか、わたしにVRMMOはプレイできないんだ、と諦めていた。
しかし、なんの気なしに見ていた求人情報サイトで、さっきのバイト募集を発見したのだ。わたしの過剰適合がOKかどうかはわからない。それでも、こんなチャンスは今までなかった。諦めていたVRへの興味が、ムクムクと湧いてくるのを感じる。
「そうだ、アミュスフィアどこにしまったっけ」
起動したのは最初の二、三回だけで、それからはしまいっぱなしだ。
でも、VRMMOに未練があって――値段的なこともあるが――どうしても捨てることができなかった。それを、また活かせる日が来るなんて。
そして、アルバイト面接の当日。ガチガチに緊張して面接に臨んだ。だが、自己紹介で《過剰適合》の話をしたとたん、「実際に見せてもらえますか」とアミュスフィアを被らされ、あれよあれよという間に合格してしまった。実装させた状態で生データを確認できる、優秀なテスターになれるとのことだ。あれほどイヤだった《過剰適合》のおかげで認められるなんて、なんだか複雑だ。
でも、これでついに憧れだったVRMMOの世界に入ることができる。しかも、そのゲームをより楽しくするための手伝いができるなんて、こんなに嬉しいことはない。
なんだか、今まで曇っていた世界が、急にクリアに見えるような、そんな感じがした。
わたしがテスターとして参加するのは《ガラクシア》。《ALO》や《GGO》など、世界観の違うゲームのキャラクターをそのままコンバートして遊べるという機能が体験できる。
だが、《ガラクシア》のウリはそれだけではない。プレイヤーが体験した思い出を、追体験できるというシステムが搭載されている。まるで夢のような話だが、脳と直接信号をやり取りするアミュスフィアだからこそできることなのだろう。
とにかく、そんな最先端のゲームのテスターとは、とてもやりがいのある仕事だ。テスターの応募者は、かなり多かったと面接官の人に聞いたが、それも頷ける。そんな中から選ばれたと思うと、これまで邪魔だった《過剰適合》にも、ちょっとだけ感謝してもいいような、そんな気がした。
そして、いよいよアルバイトの初日になった。こんなにドキドキしたのは、いつ以来だろう。もらったテスター用のコードを入力し、ゲームにログインする。まずはキャラの登録からだ。
初期キャラクターということで、選べる衣装はそれほど多くない。それでも、色やスタイルは何パターンか用意されている。これから長い付き合いになるかと思うと、やっぱり外見もこだわりたくなってしまう。
「どの衣装にしようかなあ……」
これいいかな、と目を留めるのはたいてい寒色系の衣装。
これは、わたしの名前である「風花」が影響していると思う。「風花」は「かざはな」と読むと、「晴天時にひらひらと風に舞う雪」という意味がある。好きだった曲にちなんで付けてくれた、と両親から聞いたことがあるが、ひんやりとした冷たさと、すぐに消えてしまう儚さを持ったこの名前が、わたしは好きだ。
だから、ということもないけど、リアルでの服装も寒色系が多い。友達がかわいい服を着ていると「いいなあ」と思うんだけど、自分で買うとなると、なかなか選択肢に入らない。
それなら、せめてゲームの中くらいかわいい衣装で、と思っていたんだけど、やっぱりピンとこない。散々迷った挙げ句、やっぱりいつもと同じ、青を基調とした衣装を選んだ。だって、自分の分身だもんね。

キャラクター作成が終わり、ついにゲームスタートだ。もちろんテスターという立場だけど、基本的には普通のプレイヤーと同じだ。これから、どんな冒険が待っているんだろうか。
「これからよろしくね、フウカ」
トン、と自分の胸を手で叩いて、わたし――フウカはフィールドへ一歩踏み出した。
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